公務員改革:人事院関与を温存 「不十分」野党が対決色

 政府は5日、国家公務員制度改革関連法案を閣議決定し、衆院に提出した。各府省の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」を新設する一方で、人事院が引き続き人事行政に関与できる余地も残した。民主党など野党は「改革が不十分」と対決色を強めているが、安倍晋三首相は長期政権を視野に、政治主導による人事の制度化を優先した。

 「関係者の合意を得て、政府一体となった改革法案の国会審議をお願いできることになり、感無量だ」。稲田朋美行革担当相は5日の記者会見で率直に語った。麻生政権時代には公務員制度改革を巡って首相官邸人事院の対立が激化し、政権の求心力低下に拍車がかかった経緯がある。稲田氏は今回、内閣人事局が各府省にポストを割り振る際に「人事院の意見を十分に尊重する」と法案に明記することで、人事院の同意を取り付けた。

 首相は既に外務、厚生労働両省の事務次官人事などで「安倍色」を打ち出しているが、今後、規制改革や農政改革を進めるには「政権の体力に関係なく首相が人事を行える仕組み」(内閣官房幹部)が必要と判断したようだ。

 政府は来春に内閣人事局を設置し、夏の定期人事異動から新制度での運用を目指す。ただ、今国会の審議日程は窮屈だ。自民党衆院内閣委員会で国家戦略特区法案の審議を先行する方針で、「公務員法案の会期内成立は難しい」(同党国対関係者)という見方も出ている。

 民主党は公務員への労働協約締結権付与と人事院の廃止を盛り込んだ対案を今国会に提出する方針。みんなの党日本維新の会とともに修正案を出す構えをみせている。【宮島寛、笈田直樹】